猊鼻渓と明治の文豪田山花袋の紀行文(その8)

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猊鼻渓
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な、怪訝な顔をしてそれを見送った。
     三
  昼飯をすまして、私達はぐっすりと人心地もないように寝込んで了った。
 「もし、お客様」
  こういう声が耳に入って、はっとして眼が覚めた時には、西日が既にまともに一面にさし込んで、 総領の男の児の暑そうに汗をダクダク額やら手足やらにかいて寝ているのが眼に入った。
 「あの、船頭が来やした・・・」
  こう小さな女中が言った。
 「あ、そうか。」
  時計を見ると、もう四時十五分すぎている。よくも寝たもんだなァ!と思った。私は男の児達を 呼び起こした。
 「四時すぎ?そんなに寝たかなァ!」男の児も予想外という顔をして「暑い、暑いと夢の中で思って 寝ていた。あついわけだ・・・日がさしているんだもの・・・」
 「頭がぼんやりしてやしないか?」
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