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るんだもの。」
東京へ帰って来てからまでも私達はそんな話をした。
で、餓えを醫 したために、私達は急に元気が出て来た。捷路 だという細い山路を、ぐるぐると山腹に
伝って下りて、谷の底を流れるささやかな渓流を両手に掬 った時には、私達は漸 く生き返ったような
気がした。
しかし、長坂近くなるにつれて、また山岳は遠く開けた。青田などもあちこちに見え出して来た。何
う想像して見ても、こうしたところに、天下の名山水が蔵 れてあろうとは私には想像することが出来
なかった。
私は子供達に言った。
「これで、行って見て、その猊鼻渓がつまらなかったら、それこそ、えらい眼を見るというわけだな。屹度 、そう大したもんじゃないよ。矢張 、一地方の名勝以上にいくらも出ていないに相違ないよ。
世の中のことというものは、大抵はそう皮肉に出来ているものだ・・・」
「何 して?」
父親の言葉がわからないようにして総領の方の男の子は反問した。
向こうに見える人家が、あれが長坂だというあたりまで来た時、私達は前に一桁に橋のかかっているの
※捷路・・・ちかみち ※総領・・・長男 ※本文の漢字カナについて
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で、餓えを
しかし、長坂近くなるにつれて、また山岳は遠く開けた。青田などもあちこちに見え出して来た。
私は子供達に言った。
「これで、行って見て、その猊鼻渓がつまらなかったら、それこそ、えらい眼を見るというわけだな。
「
父親の言葉がわからないようにして総領の方の男の子は反問した。
向こうに見える人家が、あれが長坂だというあたりまで来た時、私達は前に一桁に橋のかかっているの
※捷路・・・ちかみち ※総領・・・長男 ※本文の漢字カナについて