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を目にした。私は地図を展 げて、その橋のかかっている川が、何の奇もない平凡な川が、渓流といって
も藻などの底に生えている川が、その猊鼻渓のある川の下流であるということを認めた時には、益々
さっきの失望を的確にせずには居られなかった。(こんな川の上流に、天下の名山水があってたまる
ものか)というふうな腹立たしさすら感じられて来た。
「駄目だな、これは」
こう私は言った。
「何が?」
男の児はまた不思議そうにして言った。
「いや、駄目だって言うんだよ、わざわざやって来ても、失望して帰らなくってはならないって 言うんだよ。」
「・・・・・・」
何か言うとして男の子は黙って了った。
私の眼の前には、やがてさびしい宿駅 があらわれて来た。二三十年も前でなければ見られないという
ような古風な宿駅が。笠に糸立てを着て草履を穿 いた旅客、北上平野から丘陵の中の町や村に運搬し
て行くらしい日用品や、乾物類を載せた荷馬車、かと思うと、鋤 や鎌をトンカントンカンつくっている
※宿駅・・・街道の要所で、旅人の宿泊や、荷物運搬の人馬を中継ぎする設備のあった所 ※本文の漢字カナについて
スポンサードリンク「駄目だな、これは」
こう私は言った。
「何が?」
男の児はまた不思議そうにして言った。
「いや、駄目だって言うんだよ、わざわざやって来ても、失望して帰らなくってはならないって 言うんだよ。」
「・・・・・・」
何か言うとして男の子は黙って了った。
私の眼の前には、やがてさびしい
※宿駅・・・街道の要所で、旅人の宿泊や、荷物運搬の人馬を中継ぎする設備のあった所 ※本文の漢字カナについて